いつも犬の散歩には携帯も持たずに家を出る。
ときどき「散歩中に突然死したら私は身元不明の遺体になるのか」と、ぼんやり考える。完全にアンナチュラルの影響だ。
私にとって私が死ぬことは大した問題ではない。けれど、残された犬は一体どうなるのか。急に動かなくなった私を前におろおろする様子を想像する。途端に死ぬのが怖くなる。
どうか散歩中だけはご容赦願いたい。
連休明け、いつも通りの喧騒の中にいたら、なぜだか酷く泣けてきた。連休明けに仕事に行けない状況を想像して怯えていたせいか、生きてこの日を迎えたことに対する感情なのか、よくわからないけど無性に泣けて涙を堪えて人波を歩いた。
私は運が良かっただけで、被災した人との間に大きな違いはなかったと思っている。
今回、台風が来るにあたって、住んでいる市町村の避難所について確認したけれど、ペットを連れて行ける避難所は一つもなかった。
数年前にできた条例の内容からしても、どうもペット連れに厳しいという印象があったので、なんとなく予想はしていた。けれど、落胆はあった。
うちの隣家は瓦屋根。もし、風害で家も車も被害に遭ったら、私たちは行き場を失ってしまう。
近くの公園にはいつもたくさんの犬連れが訪れている。あの人たちは全員避難所には行けないということか。
もし避難指示が出たとして、私に「犬を置いて避難する」という選択肢はない。きっと私だけではないはずだ。こんな時に自己責任を持ち出されてはたまらないなと感じる。
アレルギーの問題があるのはよくわかっている。全避難所の1割でもいい。私たちには、ペットを連れて避難するという選択肢が必要だ。
声をあげないと変わらないのなら、今がその時なのではないか と自分を奮い立たせる。
出来ることを探してみようと決めた。