おしゃべりな脳みそ

脳内が多動

旅の記録

大学四年の時、必修単位ピッタリに単位を取り終え、秋から春まで時間を持て余していた私は、掛け持ちしたバイトの他にチョコレート工場で短期のバイトをしてお金を貯めて、初めての海外へ行った。

パスポートはケチって5年にしたけど、旅行先で写真をたくさん撮るためにデジカメも買ったし、時間を潰すためのiPodも買った。

しかし、パスポートはケチって正解だった。私はあの年の2回の海外旅行を最後に日本を出ていない。

海外、怖かった。スリとか強盗とかジプシーとかあれとかこれとか注意しろと言われて、もういるだけで緊張してどっと疲れた。

海外に行ってよくわかった。嫌になる事もたくさんあるが、日本は治安がいい。首からぶら下げた大事なものを、ナイフで切って持ち去られる心配がない。もうそれだけで私には充分だ。

初めての海外はイタリアだった。ローマからミラノまでを一週間かけてバスで移動しながら観光地を巡るプラン。

コロッセオ、トレビの泉、サン・ピエトロ大聖堂ピエタピサの斜塔フィレンツェの街並み、ベネチア、ヴィットリオエマヌエーレ二世通りなど有名どころをくまなくまわった。

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探してみたら、買ったばかりのデジカメで撮った写真が残っていた。本当に見るものすべてに感動した。自分の国にあんなのあったら、誇らしくなっちゃうな。

バスで一緒に移動するので、だんだんツアー参加者ともそこそこ話すようになったし、何より添乗員さんがユーモアがある人でとても面白かった。

旅行中、見たものや感じた事を忘れたくなかった私は写真では飽き足らず、毎晩 写真を見ながら日記形式であれこれと感動や面白かったことを思うままに書き綴った。

その旅の記録が、なかなか面白い(自分で言う)

ある時、夫に読ませてみたことがあった。

時々フッと笑いながら読み進めていく夫の横で、はてどんなこと書いたっけと思い返してみて、ハッとした。

2日目はイタリアから当時好きだった彼(その後付き合う)に電話をかけた話が書いてある。

「あ、ごめんダメだこれ」と言いながら、慌てて2枚目に入る前に回収。

「えっ楽しく読んでるのに」

「いや、これ以上は元彼が登場するから読ませられないな」

「いいとこだったのに!そのメモが!面白いなんて!知りたくなかった!」←ふざけてる

「はいはい、ごめんて」←笑ってる

こんなやり取りのあとも、結局 面白くて捨てられなかった。基本的に、なんでも迷いなく捨てるタイプなんだけど。汚ったない字で殴り書きされたメモは、クソみたいな元彼の記憶とともにしまってある。

 

格安ツアーのため、ミラノからアムステルダムアムステルダムから成田と乗り継ぐ帰路だった。

しかし、ご存知の方もいると思うが、ミラノは霧が多い。その日も霧が濃く、定刻を過ぎても搭乗の案内が出なかった。

アムステルダムでの乗り換え時間はそんなに長くない。このままだと、乗り換えの便に間に合わないかも知れない。不安なままアムステルダムへ向かった。

アムステルダムに着く頃には乗り換え便が出る時間を少し過ぎていた。けれど、添乗員さんの「待ってもらうよう頼んであるから、走って」という言葉を信じてみんな走った。

みんなが動く歩道を走っている時、ツアーに参加していたおばあちゃんが転んだ。

動く歩道の上でバタバタとおばあちゃんを起こそうと慌てふためく大人たち。なかなか起き上がれない、おばあちゃん。

その様子を歩道の横から見ていた私は「いや、ダメだろこれは」と思い『緊急停止ボタン押して!』とボタンを指差した。わりと大きな声が出て、自分でもビックリした。

近くにいた人がすぐさまボタンを押して、おばあちゃんは止まったレールの上でゆっくりと起き上がった。

結局、乗り換え便は定刻通りに出発していたし、私たちは無駄に走って、おばあちゃんは転び損、散々だった。

だけど、一息ついたところで出会った天使のような赤ちゃんの笑顔で、みんなが笑顔になった。

添乗員さんが取り直した便までは6時間あって、空港内でご飯を食べたり、絡み合うカップルの情事を眺めたりしながらなんとか時間を潰した。

6時間後の便でパリへ行き、パリから成田へ。おいおいまた乗り換えんのかよと思ったが、シャルルドゴール空港のスタッフ、男女ともに妙にカッコよくてモデルみたいで、みんなでテンションが上がった。空港もなんかお洒落だったな。

結局、予定より半日ほど遅くなった帰国。友人はバイトに出れなかったし(なんでバイト入れてんだよタフだな)その友人の荷物が行方不明になって1ヶ月ほどして手元に帰ってきた(乗り換えでありがち)私は遅れただけでなんの害もなかったが、とにかく疲れてしまい奮発して成田からバスで帰った。

こういう事があるから、海外旅行に行くときは絶対保険に入った方がいい。(私は入ってた)

いやはや急に保険をすすめる話になって、私も戸惑っているところですが、終わります。